弥恵の「からだのかみさま」

東京→京都に移住したライター・弥恵(やえ)の日記です

夫の虫嫌い克服と、鈴木敏夫インタビュー

新潟の実家についたら、母じゃなくてカメムシに出迎えられた。今年は寒冬なんだろうか、例年よりカメムシが多いらしい。ほっておくとそこらへんで臭くなるので(あれをパクチーと例える人がいるけど全然違うと思う)、見つけ次第ティッシュでくるんで、窓をあけ、ティッシュをフリフリする。カメムシは、ぶうんと羽音を立てて飛んでいく。

 

かつては虫嫌いだった夫に、「やってごらん」と言ってティッシュを差し出すと、優しく包んでフリフリ。夫は何を触るときもそっと触る。壊れないようにそっと。

そしてなんでもないことのように窓をしめ、こちらを振り返る。私は親指突き立ててグッ。今年はキャンプを始めて、登山のテント泊もやった。アウトドアを楽しみたいのなら虫嫌いは直したほうがいい、と言って、それとなく促してきた。どうにも嫌いなものは仕方ない。私も蛇だけは本当にだめ。サワレナイ。だけど、そもそも「虫嫌い」って幅が広すぎるんだよね。「カブトムシがだめ」ならわかるけど「虫がだめ」って何事。もうただ「嫌い」って思い込んでいるだけだと説得して、毛虫を手にとっては「ほら可愛い」と顔に突き出してみたりした。

 

思うに、アバウトな虫嫌いって、大抵親の刷り込みなんだよなあ。子どもが子どものうちから、思いっきり虫全般がだめってあるんだろうか。むしろ、家に入ってきた虫を大人が躍起になって退治したり、恐怖する姿を見た子どもが、「虫って怖いんだ」とインプットしてしまったりしただけなんじゃないか。夫の父親がやはり虫嫌いなのを聞いて以来、余計にそう思うようになった。

 

そんな夫もすっかり虫に慣れてきた。家の中に虫がいても騒がなくなった。そもそも私が虫に頓着しなさすぎだったのかもしれないけど。蜘蛛なんか見ると、つい拝んでしまったりして。

 

夕飯の時間、夫が電話打ち合わせで帰ってこないので、母とふたりでおでんをつつきながら話すと、「譲くんは偉いよ」としきりに感心する。「大人になってから嫌いなものを克服するなんて、カロリー使うもの」。そうか、なるほどそうだよね。過去に何度か、「好きになれとは言わないが、虫でいちいち騒ぐ男はいや、小さい」と結構すっぱり言ってしまったことがある。もしや夫はあれを気にしてたんだろうか。今日はしっかりとチュッチュしてあげねば。

 

そんな虫嫌いを克服した愛しの夫、鈴木敏夫さんにインタビューをしました。

そもそも夫がスタジオジブリで働くきっかけになったのは、学生時代に鈴木さんをインタビューしたことだった。あれから9年ぶりに取材することになって、当然この9年はすごく濃かったわけで。奥様に事前取材したり、年表作ってみたり、何やら楽しそうだった。

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最後のカット、喜寿祝いであげたスノーピークのジャケット着てるー

suumo.jp

 

 

ちなみに↓が、9年前、夫が学生時代(22歳)に鈴木さんをインタビューしたドッキドキの記事。

 

 

news.goo.ne.jp

いやこれが、読み比べてみたら結構面白くて。

 

「なぜ、自分で何かを表現しようと思わないのですか」。鈴木さんはその疑問に簡潔に答えてくれた。

 

「一言で言うよ。自分より優れた才能を持っている人に出会ったから。その一点。自分より優れた才能を持った人がいて、そしてその才能を世間に出したいと思った。だって、ほっといたらその才能は埋もれちゃうわけじゃない?ぼくは、せっかくそういう才能の人がいるんだから、世に出して、世に問いたかった」

 

いや宮崎高畑両監督および作品を、絶賛世に送り出している鈴木敏夫に「なんで自分で作品作んないの?」って聞く学生イカツイな!と読みながら思ってしまったんだけど。でもこの9年後、鈴木さんは初のノンフィクション小説「南の国のカンヤダ」を書いた。そう思うと、鈴木さんの進化ってすごいなあと思ってしまう。し、当時の夫の質問は、本来大切にされるべき問いなんじゃないか、とも思う。

 

夫のそばにいると、鈴木敏夫っていうテーマが、彼の中でずっと一貫してあるんだなあとひしひし感じる。結婚するちょっと前、夫に真顔で言われたことがある。「俺の人生、2つだけ。弥恵ちゃんと、鈴木敏夫」。私はこれがハイパー面白くなくて、「はあなんで私だけじゃないわけ」と怒った。それが今となっては、夫婦揃って本当に大切な存在になった。

 

虫が平気になったりね、つくづく人生は変化でできていると思う。夫は今、編集やらプロデュースやら、作家さんたちと付き合いながら色々楽しそう。だけど、譲も自分で作品を作る日が来る。きっと。