弥恵の「からだのかみさま」

東京→京都に移住したライター・弥恵(やえ)の日記です

鈴木さんに送った「南の国のカンヤダ」感想

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ジブリP鈴木敏夫さんの初のノンフィクション小説、タイ人シングルマザー・カンヤダさんを描いた「南の国のカンヤダ(鈴木敏夫/小学館)」。すごく楽しみにしてて、早速買って一気に読んで、夜中、感想を鈴木さんにLINEで送った。「(感想読んで)彼女についてわからないことが全て理解できた」って、朝返事がきてて、ちょっと泣いた。

10代からこれまで、私は普通に生きてるつもりでも、人に攻撃されるのが怖くて、大事なものを封じ込めて生きてるような感覚がずっとあったんだけど、今になってそれを開けてくれたのが鈴木さんとの出会いだったんだなあと、この小説を読んで実感してしまった。これを読んで欲しい友達の顔が何人も浮かんだ。

 

以下、昨晩、鈴木さんに送った感想です。

 

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最近自分で気づいたんですが、私はものの感想を言うときに自分がいま考えていることのどこが反応したかでしか語れなくて、なので一見自分語りみたいな感想になりますが、これも感想なので笑 読んでください。

 

・カンヤダさんはすごく長女的で、読んでて胸が痛かったです。人一倍自分のしたいようにしたいのも、同時に実家を支えたいのも、力はあっても思うようにいかないのも、そのもどかしさも良くわかる。

スキー場での出来事とか、もうすっごく良くわかります。カンヤダさんはATSUSHIくんにもっとそばにいて欲しかったし、もっというとタイでの父親がわり的立場から解放されて子供がえりみたいな気持ちだったんだと思う。だから鈴木さんにも自分をちゃんと見ててくれることを期待したと思うし、でも思ったようにならなくて、それが「タイの人と日本の人でホテルの部屋を分けたい」っていう、一回、ちゃんと自分が中心でいられる環境に閉じこもりたい、同時に「これは違う」って意思表示もしたい(日本勢がよくしてくれてるのはわかるので、なおのことそういう気分にもなる)、でもそれを「わがままだ」とATSUSHIくんに言われたとき、カンヤダさんは「そうじゃなくて私だけ見ててよ」って思ったんじゃないかなあ。でもそれはやっぱり言えないから、悲しかっただろうなあ。

あの場で甘やかしたってつけあがりはしないよ、むしろそういうわがままが出るのは一度味わわないと次にいけないからで、いや満たしてやってよお、とタイムマシン乗って彼に言いたい。。。わからないけど。なんか読んでいて泣いてしまいました。私は国も立場も違うけど、母子家庭で長女ってどうしても父親的役割を子供のうちから当たり前にやってるので、時々人に支配的になってしまうし(というかナチュラルに思考が支配的かも)、でもそのプレッシャーから逃れたくて時々、自分の存在を確認するみたいに振舞う時がある。

でもそういうプロセスは周りには伝わるわけがないので、結果、側から見たらすごいわがままに取られるようなことを、してる時があるんだと思う。そこをわかってやってくれATSUSHI、と思った。でも彼女に必要だったのは、ATSUSHIくんじゃなくて鈴木さんだったんだな、という気がする。順番として、「おとうさん」、もっと言うと「絶対裏切らない異性」を得ることの方が、彼女には切実なことだったと思う。

 

・ATSUSHIくんとカンヤダさんがもし一緒になっていたら、まずATSUSHIくんがカンヤダさんにつられ感情的に、解放的になると思うけど、でもそのあとわがままになると思う。やがてカンヤダさんがしっかりしなければならなくなる。つまり2人の関係性がちょっと逆転する。なぜそう思うかというと今のじょうと私がそれだからです。かつては私が先に手を上げていたのにいまではじょうが先に手をあげるようになった(言葉で勝てないんだって)。これが逆だった頃は、私がバンバン叩いてじょうはペチ、くらいだったのに。さすがに私の方が叩く割合が減るとバランスがおかしくなるので、3倍くらいの強さでやり返す羽目になりました。なので最近は私がしっかりしすぎないように気をつけています。でもそうやって、バランスをとりながら景色がどんどん変わって行く、これをひたすら繰り返していくのも結構面白いんだけどなあ。

 

・カンヤダさんに仏教があったこと、パクトンチャイみたいな田舎があったことは本当に幸運なのだなと思いました。私は神社好きな割に神道でもないけど(建物は信じてないし祭神も政治だったりするから)、天川の来迎院という寺の横に生えている、巨大なイチョウの木を信仰していて、それはそこに本当に大きな女性の神様が宿っている臨場感を、幼い頃も今も持ち続けているからなんですけど、仮にその木が倒れたとしてもそこにまた新しい命が芽生える、そういう磁場と輪廻は信じられる。私はそういう宗教観を持ってると、京都に移住してからやっと言葉にできるようになって。同時にそれを言葉にできて初めて、これが自分の強さかなと気づきました。

いまだから言えるけどじょうが日テレを辞めるのを反対しなかったことを(むしろずっと辞めろって言ってたことを)、随分周りにも驚かれたし、鈴木さんにも「そう決断できるのは子供を育てていくって発想がまだないからだ」と言われたんですけど、あのとき他に人がいたので言えなかったのだけど、むしろ子供を育てていきたいから日テレから離れて欲しかったのですよね。綺麗事をいうつもりはないのだけど、今の時代、大企業に勤めていることがお金に困らないことの保証にはならないと自分は思ってて、もっと言えばお金を持ってても生きることに困る時代がくると思ってて。そうなるとこの先生きることを保証できるのは健康、もっと言うと野生の勘しかないと思った。大企業の人って具合悪そうな人が多かったし。

だからこの決断は間違ってないみたい!と全編を読んでいて確信しました。極端かもしれないけど、信仰心があるってそういうことなのかなと思いました。カンヤダさんが強いのは、お金は手段であって保証ではないのを知ってるところだと思う。じゃなかったら「東京は遊びにくるところ」って言葉は出てこない気がする。

 

・あと裏表紙のタイの地図が可愛かった!  

 

・なんか読み終わってもずっと、泣きたいようなよくわからない気持ちです。胸が痛いです。でもこの先何度も読み返す本になると思いました。

 

以上

 

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