弥恵の「からだのかみさま」

東京→京都に移住したライター・弥恵(やえ)の日記です

神社のおばちゃんに連れられて

数日前、思いついてチャリ吉で神社へ向かった。なんだか今日は大吉を引く気がした。おみくじ引いたら、大吉だった。あれって不思議だよなあ、「今日はあんまり良くない気がする」と思うとあんまり良くなかったり。人は、その時の運気みたいなものを、自分が一番よくわかっているような気がする。

 

嬉しくなって、境内奥にある小高い丘の上の神社まで向かう。急な坂に少し息切れしてたどり着き、息を整えてお参りする。ふと振り返ると、ピンク色のリュックを脇においたおばちゃんと目があう。あ! あのおばちゃん!

 

「あの、こんにちは! 以前こちらでお話させていただいた者です。4月の、私がこちらに引っ越してきたばかりの時に、ここでお会いしました」

 

おばちゃんは私の目をじっとみる。彼女は、移住して最初に知り合った人だった。丘の上の神社をいつもお掃除されているそうで、元々は麓の住人だったそう。初めて会った時、私は掃き掃除をするおばちゃんの仕草に惹かれて、思わず声をかけたのだった。

 

「ああ、なんだか覚えているような」

 

どうやらよく参拝客に話しかけられるそうで、私のことはうろ覚えだったらしい。目が宙をさまよいながら、記憶を探している。いえ、無理に思い出さんでいいですよ、でもまた会いたかったので嬉しいです、というと、「この時間にいることはほとんどないの、ご縁がありますねえ」と笑う。

 

丘からは、鬱蒼とした茂みの向こうに京都の街が見える。前もそうだったけど、このおばちゃんはなんだか話しやすい。時たま、旅先でもよくそういう出会いがある。初めて会った気がしなくて、すぐに盛り上がる。話題は大阪での地震のことや、お互いに好きな神社のこと、実はあっちのお饅頭の方がオススメとか、あちらこちらに飛んでいった。

 

話しているうちに日がさしてきた。さっきまで曇りだった。おばちゃんは眩しそうに眉をしかめた。私は思いついたように言った。

 

「今日は、夏至でしたね」

 

するとおばちゃんの顔がパッと輝いた。「ねえ、この後時間ある? 日向さん、一緒にいきましょう」。日向さんとは、蹴上にある日向大神宮といって、「京のお伊勢さん」とも呼ばれているらしい。夏至は1年で最も日が長い。だから、お日さんの神社でお参りしよう、ちょうどそろそろ行こうと思っていたの、という。

 

そこから、まだ会って2回目のおばちゃんと私のドライブが始まった。車中では30分間、あらゆることを話した。京都にきてからずっと感じていること。おばちゃんが、ここ数年感じていること。色々。

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日向大神宮は、山の中にあった。「ここのお水が美味しい」と勧められ、ペットボトルに水をくむ。うん、山の水。甘い。新潟の、谷川の雪解け水の涼しい味も大好きだけど、山中の微生物の味がしそうな山の水、とりわけ梅雨時期のそれは、甘露のようにまろやかだった。

 

ほんでもってこの神社、かなり広い。全部を描写するときりがないので端折るけど、1時間半くらいは歩いたと思う。山頂にお伊勢さんの遥拝所があって、振り返ると、一直線上に平安神宮の朱い鳥居と、御所が見えた。

高曇りの太陽は真っ白に燃えて、虹の輪がかかっていた。

 

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遥拝所から見える景色

おばちゃんは相当足腰を使ったと思うのだけど、汗をかきながらそれでもピンピンしていた。小さな冒険の午後が終わって、車に戻ると、私は一気に眠くなって、スコンと落ちた。

 

チャリ吉を止めていた場所まで送ってもらって、別れ際、「また、あそこで会いましょう」と握手をした。不思議な1日。おばちゃんに出会うまで、私はあんな神社があるのを知らなかった。

 

帰宅して、私はまた泥のように眠った。耳元で、細胞が一つ一つ弾けるような、ざわざわした音をずっと聞いていた。登山とか神社とか、気持ちのいいところに行った後、いつも同じ音がする。