弥恵の「からだのかみさま」

東京→京都に移住したライター・弥恵(やえ)の日記です

顔が生意気な女たち

怒鳴るシリーズ(1)(2)(3)を書いたあと、そもそも自分が怒鳴られやすかったのはキャラクターに原因があったのでは説が浮上して、そこんとこをもうちょい掘ってみることにした。

恵比寿アトレ西館のビストロ・シロノニワにて、食べ放題のナタデココとかタピオカをつぶつぶ食べながらのランチタイム。何か問えば本質をズバッと突く鋭いコメントに定評のあるビーンズ先輩(ベルツリー族の40代女性)に、怒鳴るシリーズの内容をさらっと説明する。

「〜で、どうも周辺取材してみると、自分で思う自分(=妄想型・繊細系)と、他人から見えている自分(=強め)にかなりズレがあったのに気づいて。で、ビーンズ先輩に聞きたいんすけど、率直に私ってどう見えてます?」と私。するとビーンズ先輩、

「弥恵ちゃんは顔が生意気!」とスパッ。

か、顔かあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!

…もうねえ、ビーンズ先輩のすごいのって、誰もがあれこれまどろっこしく分析したり考えている間に、豪速球で真実をつくとこなんだよね。それでいて答えがいつも具体的。「顔」ってなると身も蓋もないようだけど、それこそが私が求めていた答えだった。

なんでかって、過去、自分が感じてきた「どうして怒鳴られるの? 局所的にすごい嫌われんの?」って疑問は、いくら自分で分析してみてもわからないわけさ。なんでかって、いくら考えても対応策が見つからないのは、攻撃の根拠そのものが、身もふたもないから。さらにビーンズ先輩はこう続ける。

「いや私も弥恵ちゃんもやっぱ似てるじゃん。与える印象が強めなんだよ。実際強いしさ。確かにすごい繊細なのも、今となっちゃわかるけど、初対面の印象は生意気な顔だし、結構ハキハキしゃべるし、強い女だなって感じ。私も生意気顔でしょ? これでたびたび嫌われてきたからね。強めの女ってそれだけで嫌われがちじゃん」

もう、そう言ってのけるあっけらかんさと開き直り加減に、悩み続けた数年間が吹っ飛んだ。だってもう「顔」って、どうしようもないじゃん。だから、開き直っていくしかないわけだよね。

にしたってあんた強えよ。。。隣で「うんうん」と熱心にうなずいてくれる、メンタル安定型・ミスグングン(30代女性)がさらりと付け足す。

「でも、強めに見えるけど実は繊細って、すごい魅力的じゃん! ギャップがある人が私は好きだよ」

そうそう、とビーンズ先輩。2人の笑顔が沁みる。そうか。ギャップ。自分じゃ全然気づかなかった、そんな矛盾した私がこの体内で同居していただなんて。そしてその「ギャップ」とやらは、おそらく自覚できないうちは事故を起こしやすいのらしい。でも自分で気づいて受け入れてしまえば、身を守る術も、生かすコツもわかる。

ビーンズ先輩は強い。強めに見えるが実際強い。そら感受性も人一倍強かったり、実は人見知りだったりという可愛らしい側面もあるのだけど、「私も怒鳴られたことあるけど、逆ギレした。そもそも我慢しないように生きてるから、そういうの我慢する必要って全くないよ」という通り、

とにかく我慢しないことが信条なのだ。そしてどうやら、私が見習うべきは、どうも同じ川の流れのなかを泳いでいる、その川上にいる彼女の生き様なのだった。

「ってか、仕事相手で怒鳴ってくるんだったら、その分ギャラくれって感じじゃない。一回につき千円払ってくれるなら我慢してもいいかも」

いや、それもほんと本質をついてるんだよね。自分でも書いて整理してみると、そもそも「怒鳴る」ってもう、人使って感情を発散してるんじゃん、って話で。私もミスグングンも、これにはモッシュばりにうなずいた。

我慢しないで生きると決めるってことは、その分、あらゆる角度から切り取られる自分を全て引き取るってことでもある。彼女だって、知らぬ間に嫌われたり、子どもが生まれてからは、幼稚園で出会うママ友との距離感に悩んでみたり、自分と社会との間で起きてくるノイズやバグを馴染ませるために、相応しいエネルギーを割いてる。

だけど全然うじうじしてなくて、「ちょっとでも話しかけてみる」とか「人見知り治したくて料理教室通ってる」とか、まっすぐ立ち向かってみたり、工夫したりすることをやめない。一見強いはずの彼女の不器用さがなんとも可愛くて、だから彼女をよく知る仲間達の間では、大変に人を惹きつける魅力的な女性なのだ。

ビーンズ先輩は一見わがままに見えるかもしれないけど、「我慢しないで生きる」ぶんの責任を負って生きてるのだった。だから彼女の言葉には強い説得力がある。

20代後半で出会って、私が最も影響を受けたのは彼女だった。やっぱり自分と同じ文脈を生きる人にこそ、学ぶものが多い。自分にとっての空白を言語化していくには、身体で理解してくれる人の言葉が不可欠なのだ。

ミスグングンはしばらく話を聞いた後、こうつけ加えた。

「でも弥恵ちゃんは、やっぱりすごい強いんだなって話聞いててわかるよ。芯が強くて、だけど身体にストレスが出やすいみたいに感じやすくて、だけど見た目が強そうに見えるっていう、ちょっと構造が複雑なだけで」

マーガレットみたいにニコッと笑うミスグングンにじんわり癒されながら、カモミールティーをすする。

「そうだね。弥恵ちゃんは強いよ。前に、『学生時代に人に嫌われたことないと思う、むしろ好かれてたくらい』って言ってたじゃん。いやその図々しさがあれば大丈夫! あはは! スーパーポジティブ!」

そうそう、そんなことをいつか言ってたんだっけ。それもよく思い返すと、私のこと嫌ってる人全然いたんだった。だけどそんなのすっかり忘れてた。今回でそれも思い出して、そして同時に根がかなり前向きらしいのを知って、なんだかすっかり開き直れる気になれたのです。