弥恵の「からだのかみさま」

東京→京都に移住したライター・弥恵(やえ)の日記です

生理痛と愛のスタンプ

子宮にキュウっと収縮するような痛みが走って、目が覚めた。腰が重だるくて、つま先が冷たい。夫に「ゆ、湯たんぽ」と懇願すると、せっせとお湯を沸かしてくれる。まどろみと腹痛のはざまでぼんやりしていると、足元がもぞっとして、暖かくなる。「おかゆとお味噌汁作っといたからね、じゃあ行ってきます」と夫。ほっぺに「チュッ」と愛のスタンプ。寝返りをうって、もういっちょ唇にスタンプ。玄関の扉がぱたんとしまって、家がまた沈黙する。

中学生のころは、生理がくるたび遅刻した。布団から起き上がれず、母に申告すると「どら」と言って、パジャマの上から腰とお腹にカイロを貼ってくれる。母の大きな手がぐっと腰を押すと、貼りたてカイロの冷えがかえってこたえる。午前中は何も口にできない。胃が痛くなるから。だから薬も飲めなくて、ただただじっとしてるしかない。

冬は一日ごと休むこともあった。冷えこそが大敵なのに、外は豪雪とくれば、もはや打つ手は籠城のみ。先日地元に帰ったら、女子高生がソレルのブーツを履いているのを見かけたけど、私たちのころはまだ内側にファーのついた靴なんてなかった。ただのゴムの長靴じゃ、どんなに厚手の靴下を履き込んでも、冷えがしみてくる。

生理痛がふと楽になってきたのは26歳あたりから。楽になると言っても、それまでが薬を飲んでも動けないほどの痛みだったので、平均値からすればまだ重い方なのかはわからん。ただ、いつの間にか痛みが弱くなっていったころ、冷え対策をかなり万全にやるようになった。むしろ生理前のイライラがきつくなった気がするけど、これについてはインドでアーユルヴェーダを学んだ友人に勧められた「フェヌグリークシード」というスパイスを連日、煎じて飲むことで、いくらか緩和している実感がある。

そう思うと、一人暮らしのころは辛かったなあ。今は夫がいてくれるおかげでかなり気が楽だ。「生理」っていうと、女性より男性の方が、実感もなくわけがわからないぶん、チグハグだけど、優しくて、その不器用な感じがいつも嬉しかった。

高校生のころ、いつもは厳しい体育の男性教師が、生理となるととたんに紳士になる。マラソン大会の練習の途中で痛みに耐えられずうずくまった私を介抱しながら、「俺の奥さんも毎回辛そうなんだよ」とか言ってたっけ。

一人っ子で男子高卒な夫からすれば、そもそも女の生態の全てが疑問符。だから付き合いたてのころから逐一、「生理前はイライラと自己嫌悪が止まらないから、サンドバッグのつもりで口答え禁止ね、何を言ってもただぎゅーってしてくれればいいのチュッ」とか、

「私は生理が重いのね、女性はみんなそれぞれ症状が違うの。まずそれを比較しないこと。その上で、これも子作りの一貫と心得、あれとこれとそれも買ってきて、口調も倍柔らかくして、今にも折れそうなかすみ草だと思って接してねチュッ」とか、時には図解したり記事を読んでもらったりして、腰のさすり方も実演して見せたりして、かなり手取り足取り教え込んできた。

言ってみれば、母が私に与えてくれた介抱による愛とか察しを、自分なりに言語化して、なんども反復しながら夫に刷り込んでる、みたいな感じ。だから夫が風邪を引いたときは、やっぱり母がそうしてくれたように介抱する。するとそれはちゃんと返ってくる。「してほしいこと」って、すでに「してくれた相手がいる」から、それを言葉にすれば、案外伝わるんだよね、根気はいるけど、それをしてくれたときって本当にうれしい。

味噌汁もちょうどいい塩加減、これもなんども言ったなあ。やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。伝わるってうれしいよなあ。。自発的に気をきかせてやってもらえることがサプライズギフトなら、これはホワイトデーのお返しみたいに、「伝わってるよ」のサインだよね。

あれ。そういやバレンタイン忘れてたわ。