弥恵の「からだのかみさま」

東京→京都に移住したライター・弥恵(やえ)の日記です

札幌の女、魚沼の女(大沢温泉3日目)

もはや私の巣と化した「かわべの湯」で、初めてお客さんと一緒になった。「あー寒い!」と叫びながらドアを開け、「あらこんにちは〜」とそのおばさんは喋り出した。湯気で顔もよく見えないのに「ほんとねえ、寒いですねえ」なんて返した。5人入れば満員、くらいの湯船のなか、おばさんは私より奥のスペースまで歩いて、ズブズブ沈んだ。

「すっごい雪ね、すごいわねーえ」

や「昨日からすごかったですよね」

「札幌と函館も今大雪らしいよ、私そっちから来たんだけれど」

や「あ、じゃあこれ寒波の影響ですか、テレビ見てなくて」

「でもこっちは風がなくていいわよねー」

や「先月新潟にいたんですけど、実家が魚沼で、大寒波ですごかったですよ」

「あら大変だったでしょう、それニュースで見たわあ」

や「これ(岩手)の2倍は積もってましたね、でも札幌もすごいでしょう」

「風がすごいのよ、でも新潟ほどではないでしょうねえ」

や「岩手の雪って粒が小さくないですか。札幌もこんなですか」

「乾燥してるんじゃないかなあ? 札幌も雪の粒が小さいよ、軽くてサラサラで、 まあニセコなんてもっと軽いけどねえ」

や「ああ、憧れるんですよ、北海道の雪。 魚沼ってすごい重たいんですよ。 わたあめちぎったみたいに雪のつぶ大きいし。 前に白馬で(スキー)滑ったらすっごく軽くて。 ニセコなんて生クリームみたいでしょうね。 外国人すごい人気ですしね。移住も多いですよね」

「そうそう、前からあったセブンイレブンが大繁盛して、 拡大して日本一の大きさになったらしいよ。 そもそもニセコはいくらでも土地があるしねえ」

や「ああ、そうですね、広かったな。 あんなでかい空も初めて見ました」

「でも雪が重いなら、雪かき大変でしょう」

や「そうですね、それがいやで実家には住めないですね。 除雪車も何往復もしてるけどどんどん積もるし」

「札幌だとシーズン3万円くらいで、業者が排雪に来てくれるよ」

や「へえ除雪じゃなくて。民間企業ですか」

「そうそう、家の敷地の角っこに 2山くらいに分けて積んでおいてくれるのよ、 楽なのよねえ。そういうのはないの」

や「自宅用除雪車を持ってるとか、 そういうのは聞きますけど。 うちはアパートなんでよくわからないですね。 一人暮らしの年配のお家には 流石に自治体がボランティアに行ったりしてると思いますけど。 毎年、誰かが屋根から落ちて死んだりしてますけどね」

「大変よねえ」

や「でも暖房代も大変じゃないですか、 一軒家のお宅だと」

「床暖房にストーブにこたつに、 家の中ではTシャツで過ごしてるよお。 暑いくらいにするから。 お父さんなんて『暑いから雪かきしてくる』とか 行って涼みに行くしね。 それでまた疲れて汗だくで帰ってくるよ」

や「アイスとか食べてね」

「そうそう。こたつでアイスね。 それにしてもやまないねえ」

や「こっちの雪は、 なんか情緒がありますよね。 雪の粒が細かくて、風がなくて、 それだけですっごい色っぽくないですか 渓谷沿いだと余計に、 どこかに吸い込まれてくみたいで」

「そうねえ、素敵ねえ、そう思うと素敵ねえ」

や「雪国を知らない人から見たら、 みんなただの雪なんだろうけど」

「本当にそうよね、 雪って全然違うのよねえ」

や「そういえばこっちの信号は横位置でしたね。 街中でしたけど」

「あ! ほんと! 気づかなかった。 じゃあそんなに街の方は積もらないね」

や「札幌も縦ですか?」

「縦縦。縦だと、『ああ、雪国』よね」

や「ね。こういう地域はなんていうんだろう」

「なんかのぼせちゃった、喋ってたら」

や「じゃあ、また」

「ごめんくださいね〜」

ガラガラバタン。