弥恵の「からだのかみさま」

東京→京都に移住したライター・弥恵(やえ)の日記です

「途方もない懐かしさ」の正体

いってえなあ。 できればもう感動したくない。感動ってしんどい。 感動すると、胸の真ん中にある真っ赤な水風船が刺激されるとバンと弾けて、中から真っ赤な液体がドロドロ出てくる。溢れた感情が肝臓を痺れさせ、消化が追いつかずに今度は肺を上がってくる…

モクレン

今朝は山鳩が口笛する声で目が覚めた。一瞬、自分の体が山の中にでもあるのかと思った。台風が近づいているのか、風が湿っぽい。レースのカーテンが膨らんでしぼむ。ベランダの外いっぱいに茂る木蓮は、天に引っ張られているみたいにまっすぐ枝を伸ばしてい…

依存するのは悪いこと?

ふと思い出して「SEX AND THE CITY」を見返していた。大学生のころ、家の中が静かなことに慣れなくて、趣味と呼べるものも見つからなくて、寂しさを埋めるためによく観てた。今思えば、生きてること自体が不安!みたいだった当時の私にとって、キャリーたち…

生活から生えてくるアイデア

鈴虫にはいったい何種類いるんだろう。新潟では盆明けには鈴虫が鳴いていたけど、京都に帰ってきたらそもそも音色が違う。少なくとも平安京の人々が聞いていたのはこの音色なのかもしれない。こないだは満月がよく見えた。夫がベッドの位置を窓際に変えたの…

トランスからの自立

朝起きたら、どんなに面倒でも外へ出て、山辺の道を散歩した。神社で一人、深呼吸して、うろ覚えのラジオ体操して、杉の林の腐葉土に裸足を沈めて、「今日も文字通り地に足つけテイル、ワタシ」としっかり確認して家に帰る。もう毎朝納豆ご飯。ニュース見な…

あおり運転のニュースを見て

去年中古の車を買ったとき、よく行ってる神社で車祓いをした。京都ではしょっちゅうどこかしらの神社やお寺の守りステッカーを貼ってる車を見てたから、なんとなくやっておこう、それくらいの気分で。 お祓いが済んだ後、振り返った禰宜さんが、「最近はあお…

お祭りなんて大嫌い

山下清の長岡花火。大好きな絵。 急遽、台風めがけて新潟から京都へ帰ってきた。用事ができて。台風は一晩で過ぎ去って、今日は無事、五山の送り火が開催された。うちは割と北の方なので、どこの文字も、まるで山に印字された花火を見ているような迫力で見ら…

知らんおっさんに怒鳴られて

生まれて初めて、赤の他人に「ぶっ殺すぞ!」って怒鳴られた。「いい加減にしろ!ぶっ殺すぞ!」。深夜1時。相手は50くらいのおっさんで、顔が真っ赤になるほど酔ってた。お酒臭かった。そのとき私は38度の高熱でクラクラしてて、それなのに身の危険を感じて…

真夏の引力

7歳の時、新潟県の魚沼へ引っ越してきた。とにかく一面田んぼの海で、それまで暮らしていた関西とは空気の匂いが違った。新潟は土の甘い香りが濃厚で、特に夏は腐葉土の酸味を含んだような匂いが夜空に立ち上る。わたしの体には、この香りによって、深く刷り…

怒りの前のさみしさに

フランス・オーベルジュの、ゴッホのお墓近く。 このところ、移動が多い。1ヶ月のフランス滞在から帰ってすぐ、京都の自宅から友人らを訪ねに伊勢へ、さらに最近仲良くなった整体師の男の子を連れて天川の例大祭で能を観て、「さて、新潟の実家へ行こう」と…

ゴッホが最期に見た景色 vol.1

何気なく曲がった角の先で、男の人と目があった。背中を青白く燃やした、フィンセント・ヴァン・ゴッホの自画像だ。 パリのオルセー美術館で、ひとしきり印象派を堪能したあと、あまりに広い館内にちょっと疲れながら、ゴッホとゴーギャンの絵が飾られるフロ…

散らして結んで

本当に今年の春分あたりから、それまで予兆はあっても曖昧だった自分の立ち位置が、いきなり「世界のこっち側」に突き飛ばされた感覚がある。あんまりいきなりだったもので、それでももう突き進んでいく時間の中で、そっかこれは前に進んで行くしか、もう本…

私とあなたの点と線

一昨年の冬、かつて暮らしていた奈良の山奥の、大好きなイチョウの木のしたで、ある男の人と出会った。 私は子供の頃からずっと会話をしていたその木とお話をしながら泣いてた。そういう時は必ずと言っていいほど人が払われるのに、人が来るなんて不思議だな…

黒潮のラブレター

真っ平らに見える海で突然、氷山の一角に頭をぶつけた、みたいな衝撃だった。 熊野に来たのは、このところほっておいても掘り起こされるいろんな記憶から、一旦逃れて身体を休めたり、地に足つくように強化したいからだった。 熊野古道を歩いて、温泉に入っ…

黒潮の記憶

雨が降った。テントの中で聞く雨の音が好き。すぐそこで、岸壁に打ち付けられる波の音がする。太平洋を一周し、東シナ海の果てからやってきた黒潮は、紀伊半島を沿って北上する。 だけど1年半ほど前、黒潮は沖で大蛇行をはじめ、紀伊半島から離岸してしまっ…

地に足つけていたいの

朝の森でヨガを教えてもらったよ 友達はいつも私にないものを持ってる。それでいて私と似たところもある。だから参考になる。よく行く伊勢の洋服屋さんのお姉さんは、いつも明るくて人を巻き込む力があって、物事を進めたり形にしていくときはちゃんと腰を落…

翡翠色の湖 in台湾

台湾で地震があったと聞いて、ニュースをつけたらつい先日見たばかりの景色が流れた。いろいろな顔が浮かぶ。6日間の旅の中で、何人もの台湾人の人たちと触れ合った。夜の寺をウロウロしていたら、「ここを探してるんだろう!」となぜだかトイレに案内してく…

人はなぜ無償の愛を求めるのか

人は本質的に無償の愛を求める生き物だと思う。そして大人になるにつれて、そのような愛を求めることの非効率さを知る。だから、誰にも依存せず生きること、孤独の淵に立っても膝を折らないことを学ぼうとする。それこそが自立した大人の態度だと。 それでも…

出会いが「答えあわせ」になるとき

京都に来て1年経った。ここで迎える二度目の誕生日。33歳になりました。私の身体と付き合って33年。色々ありました。私の身体は時々わからなくて、初めてみる海なのに、山並みなのに、歓喜するほど懐かしくて涙がでる、そんなことがよくあります。来た覚えも…

ぼんやりつらつら節

確定申告が終わった。税務署に行くときは、なぜか毎年雨だなあと思う。自転車を漕いでるとき、夫の丸いせなかを見ていると幸せだ。丸いものが好きだ。交差点で並んで、夫の頬を人差し指で掬う。何の反応もない。反応されても困る。一方的にスキンシップがし…

lcelandic music ー1000年後のアイスランド⑷

アイスランドのレコード屋「12tonar」にて <アイスランド1周めぐり、2週間の旅。メンバーは私、夫、スコット(日本人)の三人です> 夫は再びオンライン打ち合わせでいなくなったので、私とスコットは街を歩いた。日が登ると、景色を遠くまで見渡せる。坂…

信仰が変わった日ー1000年後のアイスランド⑶

まだ暗いうちから登校する少年たち(これでも8時くらい) レイキャビクの中心街へきた。どこもまだ店は開いてない。路肩がパーキングになっているので車を停め、降りた。海が近いせいか、風が強い。気温は、最低でもマイナス5度ほどしかいかず、北極圏が近…

人が暮らした歴史の浅い土地 1000年後のアイスランド⑵

アイスランド空港の出口の壁。スコットが撮ったやつ <アイスランド1周めぐり、2週間の旅。メンバーは私、夫、スコット(日本人)の三人です> レンタカーを借りて、夫の運転でアイスランドの大地を走った。さすが火山島だ。見渡す限り真っ黒な岩に、雪が…

コペンハーゲン騒動(?)ー1000年後のアイスランド⑴

この時はまだ平和だった <アイスランド1周の旅、2週間の日記です> トランジット中、コペンハーゲンで1泊した。着いたのは夕刻、時差はマイナス8時間。なんとアイスランドへの入国審査は、ハブ空港であるコペンハーゲンで済んでしまった。おまけに関税も…

「からだのかみさま」1周年 ぱふぱふー!

ブログを始めたばかりのころ、橘美彩さんにいただいた刺繍 2月1日で、「からだのかみさま」を開設して1年になります。わああ、なんだかあっという間の1年だった。早かった。はじめは人に読ませることがもう怖くて怖くてしょうがなくて、一応10年ライターをや…

防災対策してますか

東京に寄って、知人とおしゃべりしてたんだけど、ちょっと気になることがあった。ふと「そういえば防災対策ってなんかしてる?」と聞くと、なぜだか笑話で済ませてしまうこと。「すぐそこに百貨店があるから駆け込むよー食事にもありつけるし」って笑うんだ…

河童心を守りゆく

長時間パソコンを触れないことを友人にぼやいたら、「前々から思ってたけど、弥恵って絶滅危惧種みたい」と言われた。ちょっと前にも「水が綺麗なところにしか住めなそう」と、仕事相手に言われて、少なくとも初期設定は非常に水の美しい場所で、10代は雪解…

徳島と剣山と米津ライブ

京都から徳島へ車で行くとき、神戸を経て、真っ白な明石海峡大橋を渡る。やがて淡路島に入った途端、強烈な眠気に襲われる。ぼんやりとした眩しさが島の東側を覆っていて、西は雨だった。観覧車がのっそり回るSAで運転を交代して、疲れた夫はすでに眠ってる…

もうぼく拗ねちゃうゾ!

昨年、秋の初め頃まで順調に書いていた小説を、その後1日の日の入りが早くなるにつれて、まるでエネルギーダウンしたみたいに書けなくなっていった。身体のしんどさがどんどん増していった。10月ごろからブックライターの仕事で本を一冊書いていたのだけど、…

私が一番好きな声

言葉は声には勝てないんだろうなあといつも思う。なんとなくでも聞いていたい声がいくつかあって、「また聞きたい」を繰り返すうちに好きになっていく。癖になることと、好きになることの違いは、前者にどこか背徳感があるなら、後者には爽やかさだけがある…